東京証券取引所「グロース市場」の上場基準を詳しく解説!
グロース市場は、スタートアップや成長段階にある企業が資金を調達し、事業をさらに拡大するための場です。ベンチャー企業が多く上場を目指す市場であり、成長性を重視するため、ほかの市場よりも柔軟な審査基準が特徴です。
グロース市場の特徴
成長可能性が重視される
売上や利益がまだ少なくても、今後の成長性が見込まれる企業が上場を目指せます。
例えば、将来大きな市場を狙えるビジネスモデルや、独自の技術・サービスを持つ企業などが対象です。
ベンチャー企業向け
時価総額や収益の基準が比較的緩やかで、創業間もない企業でも挑戦しやすい。
投資家向け情報開示が必須
上場企業は、事業内容や成長戦略について詳しく情報開示し、投資家に信頼を与える必要があります。
グロース市場の上場審査基準
審査は形式基準と実質基準の2つに分かれます。
1. 形式基準(数値基準)
これは具体的な数字に基づいた条件です。以下は主要な基準です:
時価総額の基準
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上場時点で時価総額10億円以上(時価総額とは「株価 × 発行済株式数」で算出される企業の価値)。
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株主数の基準
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上場時点で150人以上の株主が必要。
※株主数が多いほど市場性が高まり、多くの投資家が参加しやすいと判断されます。
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流通株式の基準
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流通株式の時価総額:5億円以上
流通株式とは、株式市場で売買できる株式のことです。創業者や特定の大株主が保有する株式は流通株式に含まれません。 -
流通株式比率:25%以上
全体の株式のうち、少なくとも25%が自由に取引できる必要があります。
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純資産の基準
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純資産がプラスであること(赤字でも可)。
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2. 実質基準(成長性や信頼性の評価)
実質基準では、企業が成長可能性と社会的信頼性を備えているかが判断されます。
成長性
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将来性のあるビジネスモデルを持ち、持続的に収益を増やす見込みがあるか。
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例えば、新しい技術や市場、ユニークなサービスがある場合、成長性が評価されます。
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経営の安定性
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経営者が安定しており、事業を継続できる見込みがあること。
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過去に大きな経営トラブルがないかがチェックされます。
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情報開示の信頼性
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投資家に対して事業内容や財務状況を適切に報告しているか。
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コンプライアンス体制が整っていること。
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ガバナンス(経営管理)
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社外取締役を2名以上置くことが求められます。
外部の目線を取り入れて、不正を防ぎます。
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内部管理体制
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会社のお金やデータが適切に管理され、不正やミスがない仕組みがあるか。
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上場に必要な書類や準備
グロース市場に上場するには、以下の準備が必要です。
主幹事証券会社を選定する
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主幹事証券会社とは、企業が上場を目指す際にサポートをする証券会社のこと。審査書類の作成支援や、上場後の株式販売を行います。
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主幹事会社が「この会社は上場にふさわしい」と判断し、東証に推薦します。
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上場申請書類の準備
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事業計画書
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決算書(過去2~3年分)
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株主名簿や役員の経歴書
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内部管理体制の整備状況の説明資料
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情報開示の整備
上場後は、事業内容や財務状況を投資家に公開する義務があります。その準備として:
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会社ホームページの作成
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投資家向け資料(IR資料)の準備
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上場後の義務
グロース市場に上場すると、次のような義務が発生します:
四半期決算の報告
年4回、事業の成果を投資家に報告します。
株主総会の開催
株主に対して会社の経営状況を説明し、重要な決定事項を議論します。
コーポレートガバナンス報告書の提出
経営の透明性を確保するための取り組みを報告します。
グロース市場への上場にかかる費用
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上場審査料:150万円(東証に支払う審査費用)。
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上場承認料:300万円(上場が承認された際に支払う費用)。
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主幹事証券会社への報酬:数百万円~数千万円(規模や内容に応じて異なる)。
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弁護士・会計士費用:500万円~1,000万円程度(内部管理体制の整備や監査対応費用)。
まとめ
グロース市場は、成長を目指す企業にとって大きなチャンスです。財務状況が多少弱くても、ビジネスの将来性や独自性をアピールすることで上場できる可能性があります。ただし、透明性の高い経営や厳しい情報開示が求められるため、事前準備が重要です。
次のような企業に向いています:
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独自の技術やサービスを持つスタートアップ。
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将来的に大きな市場を狙うベンチャー企業。
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投資家からの資金調達で、さらに成長したいと考える企業。
グロース市場で上場を果たすことで、企業の信頼性が高まり、事業拡大のスピードが加速します!